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Lee-Byung-hun addicted

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第5話

『釜山で愛を抱きしめて』 第5話



「美弥ちゃん、ゴメンネ。すっかりお世話になっちゃって。じゃ、夕方羽田で待ってるから」揺は美弥の家の玄関先でそう言った。
「ええ。わかりました。でも、揺さん結構強引ですね。普通の人だったらついていきませんよ。」美弥は苦笑いしながら言った。
「私だって誘う相手を見るわよ。・・・それに何よりゾクゾクするぐらいの感性を持った人の遺伝子同士をちょっとぶつけてみてスパークする様子をどうしても眺めてみたくてね。」
「ゾクゾクする遺伝子ですか・・そそられますね。揺さんがそういうなら結構期待できそうかな。
まさか・・女じゃないですよね。」と美弥。
「まさか美弥ちゃん男?」揺はそういうとゲラゲラと笑った。
「じゃ、羽田で。」二人は笑いあって別れた。
「あ・・そうだ。どうしよう」
揺は帰り道歩きながらすっかり忘れていた今日帰国する彼のことを思い出し液晶が真っ黒の携帯を手に取る。
「まさか・・夕べ来てないよね。」
慌てた揺はそうつぶやきながら家路を急いだ。

「夕べ一晩中寝ないで待ってたみたいで。珍しく朝ごはんも食べないで帰っちゃったわよ」
不二子が淡々と報告する。
「来た時は元気だったのにね・・・」とトメ。
「おばあちゃんも不二子さんも勘弁してくださいよ・・」揺は頭を抱えた。
ビョンホンの携帯には家にたどり着いてから何度か連絡したが留守番電話だった。
「まいったな・・・とにかく行ってきます。」と揺。
「どこに?」
「彼に会いに釜山に」そういうやいなや、揺は階段を駆け上がっていた。


「ついてるわね。飛行機のチケットもすぐに取れたし。二泊目はホテルのスウィートルームとってあるんだけど一泊目は民家に居候なんだ。いいかな。」
「何だかすごいギャップですね。いいですよ。楽しそうだから。それにしても揺さん、ひとりでスウィートルームに泊まるつもりだったんですか?」美弥が笑いながら訊ねた。
「まあ、いろいろ事情があるのよ。それは追い追い話すから」
揺はそう答えると大きなあくびをひとつした。
飛行機の心地よい振動が身体に伝わってくる。彼は今頃どうしているだろう。
「ごめん。ちょっと寝るね。」揺は美弥に一言断ると彼のことを思いながら目を閉じた。

「こんばんは~」揺は玄関先で大声で叫んだ。
「あ・・・・オンニが来た!」スヨンが家から飛んで出てきた。
「スヨナ~。大きくなったね~~。元気だった?」
揺はにっこりと笑ってスヨンを抱きしめた。
「うん。オンニ待ってたんだよ。スヨンのこと忘れないでいてくれて凄く嬉しいよ。」
スヨンはそういいながら飛び跳ねていた。
「いやぁ~。元気だったかい~」
家のなかからヒョンジャとチスが顔を出した。
「ほらほら、待ってたんだよ。疲れただろ。ほら、遠慮しないで上がって上がって」
「おじさんおばさん、お久しぶりです。急なんですけど友達も一緒なんですけどいいですか?」
揺は遠慮がちに言った。
「あんたの友達ならうちらも友達だから気にすることないよ。ほら、上がって」
ここは以前ビョンホンと初めて釜山を訪れた時ひょんなことから泊めてもらった民家。
「図々しくてすいません。でも釜山に来ることになったんでどうしても皆さんのお顔が見たくて」
「うれしいじゃないかい。気にかけてくれて。こんなうちで良かったらいくらでも泊まってお行きな。ねえ、とうちゃん」ヒョンジャは相変わらずの調子でそう言った。
チスは黙ってにこやかに笑いながら頷き酒を飲んでいた。
「ほら、チゲがあったかいうちに食べなさい」チスに勧められ山のように用意されたご馳走に舌鼓をうつ。日本人である美弥も交えながら会話も弾んだ。
「で・・・旦那さんは元気かい?」ヒョンジャがにこやかに聞いた。
噴出す揺。
そうだった。ここでは二人は夫婦ということになっていたんだった。
あの時のことを思い出す。
「ええ。元気です。今日は仕事で。」と揺は引きつりながら答えた。
「そういえば、あんたの旦那さん、え・・っと何だっけ。」とヒョンジャ。
「イ・ビョンホン」とチス。
「そうそう。イ・ビョンホンにそっくりでね。そういえば映画祭に来てるんじゃないの?この時期は釜山はそれはもうお祭り騒ぎだから」
「はははは・・・そうかもしれませんね。」揺は引きつりながら笑った。


「揺さん、本当は結婚してるんですか?」
美弥がフトンの上で体操をしながら訊ねた。
スヨンと風呂から出てきた揺が髪を拭きながら恥ずかしそうに答える。
「あれは・・・行きがかりでね。去年ここに泊めてもらったときそういうことにしたもんだから。そうなってるのよ。」
「ふ~~~ん。イ・ビョンホン似の旦那さんね・・・・」美弥はニヤニヤと笑っている。
「何?」
「いや、これで本物のイ・ビョンホンが揺さんのフィアンセだったら面白いなぁ・・と思って。」
「はははは・・・」揺は否定することもできずかといって肯定するのも気恥ずかしくてそんな返事をした。明日になればどうせわかることだし・・実はそうなの。だからソル・ギョングがいいと言われたのが悔しかったの・・なんて恥ずかしくてしらふではとても言えない。
「オンニ~」そんな時スヨンが枕を持って部屋に来た。
「一緒に寝ていいかな」
「もちろん。・・で調子はどう?」
「うん。もうバッチリ」スヨンは嬉しそうに言った。
「そうか・・スヨンもおねえちゃんになったね・・じゃ、女同士並んで寝ますか。」
揺はスヨンをそう言ってギュと抱きしめた。
そして川の字になって床に就く。
そう。あの時・・・スヨンをまたいで彼は熱いキスをしてくれたっけ。
気が遠くなるようなとろけるようなキス・・・・・・。
スヨンの家の天井を見つめながら揺は体の芯が熱くなるのを感じた。
明日にはきっと彼に会える。それに明日はゾクゾクする遺伝子をめぐり合わせる仕事もある。
揺はワクワクしながらそっと目を閉じた。




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